2009年11月1日日曜日

インディアン

ブライアン・アムスタッツさんから一冊の本が郵送されてきた。
森田ゆり「聖なる魂」朝日新聞社。1989年発行だから20年前の本だ。現代アメ
リカ・インディアン指導者デニス・バンクスは語る、という副題がついてい
る。ちなみに値段は1500円。
こんなふうに書いても、いったい何のこと?と思われるはずである。
何のことか、これから説明することにする、というかしたい。
まずアムスタッツさんとは誰か。そして彼は何故わたしにインディアンの本を
送ってきたか、ということである。

わたしは今まで発表してきた作品を1冊のカタログにまとめた。出来上がった
ばかりで、まだ周りにいる人と笠間のアートカクテル展でしか配っていない。
今度の年賀状代わりにみなさんに送るつもりでいる。テキストを現代美術館の
山本雅美さんに書いてもらった。英訳もつけようと考えて、山本さんに翻訳者
を紹介してもらった。それがアムスタッツさんである。彼は川越に住むアメリ
カ人で、美術関係専門に翻訳の仕事をしている。翻訳するにあたって、細かい
ところの翻訳が微妙なので、質問がいくつかあるという。わたしは千葉から川
越まで電車で出かけてアムスタッツさんに会うことにした。川越市駅のスター
バックスでコーヒーを飲みながら翻訳の「打ち合わせ」をした。多分わたしよ
り年上の人なつこい感じのブライアンは、翻訳の依頼者が直接会いに来たのは
初めてだ、と言いながら話しは雑談になった。カタログにはわたしのインスタ
レーションと絵画の作品の他に写真作品も載せている。女子医大のスタッフを
撮った写真で、タイトルはメディスン・ウーマン。病院関係
の写真だからメディスンという言葉を使ったのかというとそうではない。イン
ディアンのメディスンマンから取った言葉だ、ということを伝えると、ブライ
アンは目を輝かせて、わたしもインディアンに興味があってたくさん本を読ん
でいる!ということで話しは盛り上がった。
で、今回彼はわたしに本を送ってくれた、ということなのだ。簡単にいうとそ
ういうことだ。いくら翻訳の仕事をしていて日本語ができるといっても、この
かなり難しい本をブライアンは日本語で読んでしまうのだと知ってかなり驚い
た。貴重な本なのに、簡単に人にあげてしまうところがインディアンっぽい。
英語の短いメッセージが添えられてて、読み終わったらだれか他の人にあげて
ください、とある。
メディスンマンてなに?メディスン・ウーマンてじゃなんなの?という問いに
答えるとすごく長くなるので、ここでは省く。わたしの絵画作品のウ゛ィジョ
ン・クエストというシリーズもインディアンの言葉である。
わたしがインディアンに興味をもったきっかけは、女子医大の主治医だった
(今は新宿で開業している)柴垣三季先生の一言だった。「インディアンてね、
どんな人の話でも真剣に聞くんですって。わたしインディアンになりたいなあ
…」

時間も気になるので、もう少しここで本を読んでいくというブライアンを残し
てわたしはスターバックスを出た。静かにテーブルの本に視線を落とすブライ
アンがインディアンに見えた。
(吉岡 政美:昭和56年卒、互一会)

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