2009年11月30日月曜日

展評

11月21日(土)
アートプログラム青梅2009「空間の身振り」展を見に行く。青梅って立川から
さらに30分以上電車に乗る。遠い。笠間より遠い。
笠間と同じような街全体を使った展覧会なので興味があったわけだ。企画大変
だろうなあ…と同情の念を禁じえない。代表の原田さん大丈夫かなあ。
出品作家は12人だけど、美大学生の展示も50近くあるので、全部見ようとは端
から思わない。一日で見られないんじゃないの?私は吉野辰海と戸谷茂雄と母
袋俊也を見ればいいやと思ってその通りにした。あとは学生では武蔵野美大の
外川麻未さん。外川さんはアートカクテルに出品していた中澤小智子さんの教
え子で中澤さんのギャラリー睦個展に搬入手伝いで来ていたので、見なくて
は、と思っていた。
空き地に洗濯物が干してあった。シャツやシーツが真っ白で、なんでこんなと
ころに!とびっくりしていたら、外川さんの作品だった。インパクトあるな
あ。通りかかった一般の人が、わけわかんないと言いながら歩き去る。わけわ
かんないのはあんたらの殺伐とした物を見る目だバータレ!と心の中で呟く。
素直に思うんだけど、日本人の感受性というか文化レベルというのは世界でも
珍しいくらい最低だよ。
戸谷茂雄はさすがだなあと思う作品を野外に置いてあった。吉野辰海は、作品
が強靭であれば、どこに置いたって様になるんだよって思う傑作だった。作品
に合う会場がないなどとほざく作家がいるが、その程度の作品でしかないって
ことだよ。この人の作品は買いたい。吉野辰海を見るだけでも青梅まで行って
よかったな。母袋俊也は期待外れ。ひょっとしたらこの人「ニセモノ」かも。
作間敏宏は一人だけバスを使わなくては行けない会場だったので、えらそうな
ので行ってあげない。それほどの作品ではない。
学生作品は会場が全くわからないので(会場表示が全くない)もうどうでもい
いって感じ。見て欲しいという情熱が感じられない。
学生展はいらない。
シンポジウムもあったみたいだけど「地場が動く」というありがちなタイトル
だけでもう結構ですって感じ。そう簡単に地場は動かないよ。
ぼやきになってしまったけど、企画の原田さんはエライ!がんばってね!
11月28日(土)
Art Session TUKUBA 2009展。この展覧会は前回アートカクテルの那須光則が
出品していたので見に行った。第二会場のつくば美術館はつくば駅のすぐそば
だけど、第一会場の歴史広場はシャトルバスに乗ってから徒歩20分。見る人の
立場に立ってない。
今回は津田亜紀子が出品しているので見に行く。吉野辰海も出品しているので
楽しみだった。
つくば駅から歩いてすぐのところにつくば美術館がある。小さい美術館だ。う
らわ美術館ぐらいかなあ。
通路にある岡本敦生の石彫を無視して入り口に行くといきなり津田さんの作品
があった。かなり衝撃的な作品で唖然とする。「染みからの妄想」は今までの
津田作品から大きく旋回してる。体が犬か豹のようで狛犬のようなポーズで
しゃがんでいる。腕は人間、胸は大きな乳房が盛り上がり、顔は愁いを含んだ
表情の女性で真っ赤な色で着色。エクソシストみたいに首が180°後ろを向い
ている。さらに鼻は50センチ以上の長さでピノキオのよう。こんなに不気味で
妖しくエロティックな作品は初めて見た。欲しい。津田さんの作品が抜きんで
てるので他の作家は完全に霞んでしまっている。吉野辰海はキッチュでフェ
ティッシュな「象少女」を出しているのが青梅の作品と全く違っていて面白
い。他の作品はまあ、よくありがちな作品だね。吉本義人は長くやってりゃい
いってもんじゃないし、國安孝昌はいつまでも同じことやっててもなあ…て感
じ。田中信太郎は飽きる。しかし津田さんはやっぱりすごい。ますます異様で
エロティックなところに行こうとしてるなあ。入場者数は少
ないだろうなあ、と思うつくば美術館もなかなか大変そうだなあ。
今、小島信夫の遺作「残光」(新潮文庫)を読んでいるが、その中に「斎藤義重
さんは思慮ぶかくて用心深い画家である」とある。小島信夫は斎藤義重を知っ
てたんだろうか。作品見たりしてたのかなあ、と気になった。
バタイユの新しい文庫が出てたので買った。ジョルジュ・バタイユ「純然たる
幸福」(ちくま学芸文庫)、ピカソやクレーに関する文もあって興味をもった
が、短いコメントだった。短いのは書かなかったのではなく書けなかったんだ
ろうな。美術に関して文章を綴るのはバタイユでも大変なんじゃないかなとか
思った。バタイユのいう「供犠」という概念と美術はすごく関係あるのでは…
と最近わたしは考えている。
バタイユよりも川上未映子のほうがいい文章書いてるよ。川上未映子「そら頭
はでかいです、世界がすこんと入ります」(講談社文庫)「私はゴッホにゆうた
りたい」という文がいい。一部を引用する。
「あんたは自分の仕事をして、やりとおして、ほいで死んでいったなあ、私は
誰よりも、あんたがかわいそうで、かわいそうで、それで世界中の誰も敵わん
と思うわ、あんたのこと思ったらな、こんな全然関係ないこんなとこに今生き
てる関係のない私の気持ちがな、揺れて揺れて涙でて、ほんでそんな人がおっ
たこと、絵をみれたこと、私はあんたに、もうしゃあないけど、やっぱりあり
がとうっていいたいわ、
だからあんたの絵は、ずっと残っていくで、すごいことやな、すごいなあ、よ
かったなあ、そやから自分は何も残せんかったとか、そんな風には、そんな風
には思わんといてな、どんな気持ちで死んでいったか考えたら、私までほんま
に苦しい、でも今はみんなあんたの絵をすきやよ、
私はどうにかして、これを、それを、あんたにな、めっちゃ笑ってな、ゆうた
りたいねん。」

(吉岡 政美:昭和56年卒、互一会)

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